昔々、あるところにおじいさんとおばあさんがいました。子供(こども)がいなかったのでおじいさんとおばあさんは寂(さび)しくて、「手の指(ゆび)ほどの小さい子供でもいいからお授け(さず)ください。」とお様(てんとうさま)にお願いしました。
ある日、本当(ほんとう)に手の指くらいの子供が生まれて来ました。おじいさんとおばあさんは喜(よろこ)びました。とても小さい男の子だったので、一寸法師という名をつけ、かわいがって育(そだ)てました。けれども、三年経っても一寸法師はちっとも大きくなりません。五年たっても、大きくなりません。十年たっても、一寸法師はまだ生まれたときと同じように手の指の高さの男の子です。おじいさんとおばあさんは心配(しんぱい)になりましたが、いくら大事(だいじ)にしても、いくら食べさせても一寸法師は大きくなりません。
小さな一寸法師は、家でおばあさんの手伝(てつだ)いもできないし、畑(はたけ)でおじいさんと一緒(いっしょ)に働いても草(くさ)を一本しか運(はこ)べません。一寸法師は踊(おど)りと歌(うた)が上手(じょうず)になりましたが、背(せ)が伸びないので仕事(しごと)ができません。それに村の子供たちにいつもばかにされていました。みなは一寸法師のことを「ちび、ちび」と呼んでいました。一寸法師はつまらなくて、ある日旅(たび)に出掛けることにしました。
おじいさんとおばあさんに「わたしは都(みやこ)に仕事を見つけに行きます。」と言いました。
おじいさんとおばあさんは寂しかったけれども、仕方がなく、一寸法師にお椀(わん)とお箸(はし)と針(はり)を持たせました。そして、一寸法師はお椀を傘のかわりに被(かぶ)って、針を刀(かたな)にし、お箸を杖(つえ)のかわりにして、都に向って歩き始めました。
一寸法師は歩き続(つづ)けましたが、行けども行けども都は遠くてまだ着きません。途中(とちゅう)で、蟻(あり)に会って、道を尋(たず)ねました。
「蒲公英(たんぽぽ)よこちょう、つくしのはずれ、川をあがる。」と蟻が教えてくれました。