【天声人語】土曜日の大金星 2019年9月29日
戯曲の名作『ゴドーを待ちながら』で知られるノーベル賞作家ベケットは高校時代、ラグビー部の主将だった。故国アイルランドの有力紙によれば、眼鏡なしでは目がよく見えなかったものの「ライオンのように勇猛果敢」な攻めを見せたという▼長く暮らしたパリでも、ことラグビーとなるとアイルランドを熱心に応援。英紙ガーディアンを読むと、ラグビーの試合の放送がある土曜日は、面会の約束を入れないことで知られたそうだ▼開催中のラグビーW杯で、優勝候補と目されるアイルランドが番狂わせを喫した。金星を挙げたのはわが日本である。声援の後押しがあったとはいえ、いったい何人の評論家がこの結果を予想し得ただろう▼日本が逆転した後は当方も、いつアイルランドが本気を出すか、いつ日本が力でねじふせられるのか手に汗握った。試合終了の笛が鳴ると、土曜夕刻の本紙編集部にも驚きの声がこだました▼17対145――。日本ラグビーW杯史に残る最多失点である。1995年の第3回大会でニュージーランドに矢のようなトライを浴びた。「記録的惨敗」「次に生かせ、この屈辱」。試合の結果を報じた本紙は、いま読み返すのもつらい。あのころが日本ラグビーの真冬ならば、いまはさしずめ春の初めか、あるいはもう夏の入り口か▼難解な不条理劇で知られたベケットの、今年は没後30年の節目である。ご存命なら、きのうの土曜日、静岡県からの中継を見て、地団太踏んで悔しがったはずである。
星期六的大金星
因戏曲名作《等待戈多》而为人所熟知的诺贝尔奖作家贝克特,高中时曾是橄榄球队的主力球员。据故国爱尔兰有影响力的报纸介绍,虽然贝克特不戴眼镜就看不清,但他却有“像狮子一样勇猛果断”的进攻。
即便是在长期生活的巴黎,一说起橄榄球便会热情地为爱尔兰加油。英国卫报记载,有橄榄球比赛直播的星期六,他一般不约别人。
正在举行的橄榄球世界杯上,被视为冠 军候选人的爱尔兰爆出了冷门。冠 军竟是我们日本。虽说是主场作战,但又有多少评论家预料到这样的结果呢。
日本翻盘后,我方也为爱尔兰何时反击,日本何时会被对方实力制服而捏了一把汗。比赛结束的哨声响起,星期六傍晚,本报的编辑部也回响着惊讶的声音。
17比145。这是日本橄榄球世界杯历史上最多的失分。1995年第三次世界杯上,日本遭受了新西兰箭一般的触地得分。“创纪录的惨败”、“下次洗刷这次的屈辱”。现在重新读报道比赛结果的本报,仍然会很难受。如果说那里是日本橄榄球的严冬期,那么现在就是橄榄球的初春,或是说站在了夏天的入口吧。
今年是以难懂不合条理的戏曲而为人所知的贝克特去世30周年。如果现在他还活着的话,昨天看着从静冈发回的直播,应该后悔地直跺脚吧。