女:見て、この絵。なんだか皆でテーブルを囲んで楽しそうな気もするけど、悲しげな感じもするわね。
男:ああ、これはルネサンスを代表するとも言える絵だよ。
女:そっか。教科書でも見たことがあるわ。
男:そうだね。有名だし。この絵は一点透視画法を用いてることがよく分かるよね。
女:いってん…何?
男:一点透視画法。まあ、言葉は別に重要じゃないけど。こうやって人々だけじゃなくて、背景を見ると、ちゃんと遠くなればなるほど、壁の扉の部分が小さくなっていって一番奥の窓が小さい、奥行きが感じられるだろう。いくつかの直線が一点に集まっていく構造を使うっていうのはルネサンスの時代に開発された画法なんだって。
女:ええ?こんなの部屋の中の絵とか描く時広角のが当り前じゃない。後、長く続く線路とか道が奥に続いていく絵とか。
男:それは僕たちがそういう絵や写真を見たことがあったりするからじゃないかなあ。
女:そうなの?見たままっていう感じがするんだけど。
男:幼児が描いた絵なんかは、山や家や人を描いて遠近感を出すことができるかもしれないけど。せいぜい大きいか、小さいかとかだよね。
女:へえ。そうだったかなあ。無意識に描いているような気になってたけどなあ。じゃ ルネサンスより前の人はどうやって遠近感とか奥行きを出してたの?
男:ルネサンス期より前は物や人が重なり合っていることで遠近感を表したというよ。
女:ええ?遠くに行っても同じ大きさなの?
男:うん。まあ、遠くにあるものほど小さく描くっていうのはルネサンスより前にも新しいんだけど、背景を見たままに描こうとか構図として奥行きが感じられる角度で描こうという意図はあまりなかったというよ。古代人が描いた壁画とかに背景まで描かれていることなんてほとんどないよね。
女:そう言えば、そうだったかも。人とか動物とかしかいなくて一列に並んでいるような…
男:そうそう。他にはルネサンスより前にも例えば、水平線を描いてそれに近いかどうかで遠近感を出すという方法はあったみたい。
女:それだけで遠近感が出るの?
男:とりあえず、実際の見え方は別にして同じ大きさに描いてもその直線から離れている方が手前にあるようには見えるはずだよ。
女:ふ~ん。なんとなく分かったような。じゃ、こっちの絵は?建物そのものを描いているけど、もっと前の時代なの?別に背景とかないし…
男:これもルネサンス以降の技法を使った典型的なものだよ。建物を斜めから見ていて奥行きが感じられるし、しっかり遠くの柱のほうが短くなっているだろう。それに一番遠くにあるように見える点が一つじゃなくて二つあるだけで、さっき見たのと同じ直線が点に集まっていく構造を使った絵なんだよ。ちょうど曲がり角にある建物を見たと考えれば奥に広がる二本の道が想像できるだろう。
女:ああ、本当だ。
男:要するに、ルネサンスより前は画家たちは別に背景や見る角度なんて重視せずに奥行きを表現するなんていう発想がなかったんじゃないかなあ。
女:ふん。
男:日本の平安時代なんかはそれより前の時代に当たるんだけど遠くの人や建物のほうが大きく描かれている絵もあったくらいだよ。それは大事な人を大きく描くという意図があったからだと聞いたことがあるよ。
女:へえ。そういう目で見てみると、絵もなんだか面白いわね。これなんかはじゃ何もそういう技法が使われていないわね。
男:いえいえ。これは遠くに行くほど色が薄く、明るくというか青みがかってるよね。それにぼやけている。これもルネサンス期以降に開発された遠近法だよ。有名なモナ・リザなんかの背景にも使われているじゃない。
女:そうなんだ。意識して見ないと、そんなことちっとも気がつかないわ。とにかく絵はその時代の人のものの見方も反映しているのかもしれないってことね。
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