世の中では家にごろごろしている亭主のことを、もったいなくも粗大ゴミなどといいます。これは自分の愛車が危うく粗大になろうとしたらという情けない話。
NKKに勤める永田さんは、退社後、自分の住んでいる隣駅で友人の長浦さんはと合うことになりました。どうせ飲むことになると思い、車は家へ置きに帰ろうと考えたのです。しかしどう考えても、いったん家へ帰ったら約束に間に合いません。
そこで、駅に近い学校の塀にぴたりと車をつけて、急いで電車に乗って友達に会いに行きました。相手の長浦さんもお酒好きなので、話には花が咲き、二人とも車で帰るほどしたたかに飲んでしまったのです。
翌朝、出勤しようとして車庫へいった永田さんはびっくり仰天、車がないのです。てっきり盗まれたと思った彼は、駅前にある交番に駈けつけました。
「車庫から車が盗まれました。」というと、おまわりさんは落ち着いたもので、
「車庫から車が盗まれるなんて考えられませんね。ところで車のキーは?」
といわれてみると、いつも入れているポケットに車のキーも、キーホールダーもないではありませんか。おまわりさんが奥からキーを持ってきて、
「これ、昨日の夜届いたものだけど」
前後の事情がなにがなんだかわからず、がんがんする頭を抱えながら、交番からの帰り道、ひょいと顔を上げたら、学校の脇の道になんと自分の車がゴミの山の中に埋もれているではありませんか。車のキーはその近くへ落としたようです。近所の人には相当迷惑な燃えない粗大ゴミだったことでしょう。
車を動かしてまず家へ帰るとき、奥さんが「またか」という顔をして笑いながら玄関に立っていました。