読解.文法 (200点 90分)
問題Ⅰ 次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。答えは、1・2・3・4から最も適当なものを一つ選びなさい。
人間が環境に適応してうまく生きていくためには、子どもにしろ、学生にしろ、あるいはま た社会人にしても、さらに一家の主婦でも一国の総理大臣でも、自分のおかれた状況を意識し、その中での自身の立場をよく知り、考え、それによって今どのように行動したらよいかを正しく 判断することがもとめられます。この場合に動員される精神機能が、知能です。したがって知能には、直感とかひらめきのような瞬間的に心に浮かぶ判断力から、瞬間的にはわからないが 長時間熟慮のすえにようやく一つの判断にたどりつく心の働きまで含まれることになります。
〔 ① 〕、心の働きのみちすじや精神活動の手続きを踏まない本能的行動や動物本来の反射的行動などは、知能とはいえません。たとえとして、②野生のサルが食べ物をさがして食べる行動をみてみましょう。
まず、サルが空腹をおぼえることは、動物本来の生理的感覚ですから知能ではありません。しかし、その空腹感によって食べ物を求めようとするとき、どこに食べ物がありそうかと考え、 そちらの方向へ移動をはじめようとするのはサルなりに判断が働きますから知能でしょう。ところで移動のさい、どの道を通ったら安全で効果的かの選択は知能によりますが、走ったり歩いたりの筋肉運動自身は、機械的になされますから知能活動とはいえません。[ A ]
ともかくそのようにして、ある物体を目撃し、それが食べ物か否かの判断はサルの知能によります。つまり、サルはその物体を直感的にか仔細にかいずれにせよ観察して、③それがやはり食べ物だと見ぬきます。そこで食べはじめるわけですが、元来ものを食べる行為は、無防備に なることですから、サルは安全に食べられる場所をさがさなければなりません。安全と思われる場所で食べはじめても、不意の外敵に襲われないよう絶えず周囲に気をくばっていなければ なりません。このような用心は〔 ④ 〕。[ B ]
一方、サルが食べ物をムシャムシャ食べるさい、食べ物を噛むことは機械的におこなわれ、同時に唾液が口中に出てくることも反射によるものですから知能とはいえません。じゅうぶん 噛んでから胃のほうへのみこむことも消化管の反射運動ですので知能ではありません。[ C ]
さて、このようにサルで観察される知能的行動と反射的·本能的行動の絡みあいは、⑤レベルに大きな差はあるものの、人間の場合にも原則として当てはまると思われます。つまり、人間では、サルとくらべて知能を必要とする事柄が圧倒的に多いのですが、日常生活が知能と反射·本能によって営まれていることは、サルも人間も共通ではないでしょうか。[ D ]
動物でもサルよりずっと進化の程度が低くなっていくと、その行動は知能によるものがだん だん減っていき、本能や反射に支配されるものが大部分となってきます。(中略)
端的な例ですが、アメーバの行動は、完全に周囲の状況に対する反射によっておこるのであ って、アメーバが、多少であっても知能を働かせて行動することがあるとは考えられません。いいかえれば、アメーバは、知能などなくても生きていかれるし、子孫も栄えているわけです。
(安藤春彦『知能とは何か』講談社による)
問(1) 第1段落(人間が環境に……含まれることになります。)では何を説明しているか。
1.環境への適応について 2.知能について 3.直感について 4.心の働きについて
問(2) [ ① ]に入れる言葉を次の中から選びなさい。
1.これによって 2.この中で 3.これについて 4.これに対して
問(3) ②「野生のサルが食べ物をさがして食べる行動」とあるが、サルが食べ物をさがして食べるまでの行動の説明はどこまでか。その終わりの箇所を本文の[ A ] [ B ] [ C ] [ D ]から選びなさい。
1.[ A ] 2.[ B ] 3.[ C ] 4.[ D ]
問(4) ③「それ」は何を指しているか。
1.その本能 2.そのサル 3.その物体 4.その直感
問(5) [ ④ ]にはどんな文を入れるのが適当か。
1.知能とみるべきでしょう。
2.知能とはいえないでしょう。
3.サルの行動ではないでしょう。
4.サルにしかみられないでしょう。
問(6) ⑤「レベルに大きな差はあるものの」とあるが、これに最も近い内容のものは次のどれか。
1.サルのほうが知能が高いと判断される場合も多くあるが
2.他の動物は、サルよりずっと進化の程度が低いように見えるが
3.サルの生活に知能は必要ないので、くらべるのは難しいが
4. 知能を必要とする事柄は、サルより人間のほうがはるかに多いが
問(7) 本文の内容から考えて、次のうち「知能」と呼べるものはどれか。
1.食べ物を食べたいと思う
2.食べ物かどうか見ぬく
3.食べ物に近づくとき足を使う
4.食べ物を口の中で噛む
問(8) 筆者は、人間とサルはどんな点で同じだと言っているか。
1.知能的行動と反射的·本能的行動によって生活しているという点で
2.食べ物をさがして食べるまでの行動がよく似ているという点で
3.どちらも、他の動物とくらべて知能が非常に高いという点で
4.どちらも、機械的·反射的行動がほとんどないという点で
問題Ⅱ 次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。答えは、1・2・3・4から最も適当なものを一つ選びなさい。
これは、終戦後間もないころ、①友人から聞いた話である。彼は、だいたいが慎重な運転をする男だったが、ある日のこと、横丁から突然、そば屋の青年が自転車で飛び出してきて、彼の自動車と衝突してしまった。
幸い青年にケガはなかったが、自転車はメチャメチャ。さっそくおおぜいの人垣ができ、警. 察官もやってきた。友人が、「私には責任はない。その青年の不注意だ」と主張すると、その話を聞いた警察官は、②とにかく五千円払えば立ち去ってもよい、と言ったという。
友人が、「ちょっと待ってください。私には落度がないのに、なぜ罰金を……」と③問い返すと、彼は「いや罰金じゃない。青年がかわいそうじゃありませんか」と答えた。その青年はおそら く店にいられなくなるだろう、だからせめてメチャメチャになった自転車の代金の一部だけで も、と警察官は考えたのだろう。
④悪くすると、これは大きなトラブルになりかねない。友人は根が日本びいきで、日本語も日本人的心情も理解していたから、それ以上の論争にはならなかったが、どちらがよいか悪いかの問題ではなく、西洋と日本では、法や正義に対する考え方が、全く違うことがわかる。この警察官の考え方の中には、正義とか法とかいう理念よりも、きわめて日本的な情けや情といっ たものが深く入り込んでいたのである。
これは、実に人間味のある態度、考え方で、友人の話を聞いた私は⑤大いに感動した。理屈や理性だけで判断を下すのではなく、その前後の事情や個々の状況を参考にして、より人情味に あふれる決定を下すというのは、まさに人道的だと思う。
西洋的な法の観念に慣らされた者が、このような⑥日本的心情を理解するのは、かなりむずかしいことであるが、こういった⑦不合理な部分が許されるからこそ、日本は世界でも珍しく住みよい、人間のふれ合いのある国でいられるのではないだろうか。これらは、日本入が、みずからの長所として、もっと自覚し、誇りを持ってよいことである。
しかし同時に、こういった情は、なんとも定義しにくいものであり、客観的な法の理念の中に入れることは、なかなかむずかしい。そして、もしそれを許すなら、しまいには人権を守る ことさえできなくなってしまう。
(ヨゼフ·ロゲンドルフ「ニッポンの大学生』主婦の友社による)
問(1) ①「友人から聞いた話」の内容に含まれるのは次のどれか。
1.事故でおおぜいの人が死んだ。
2.事故でけがをした人はいない。
3.事故で友人は大けがをした。
4.事故で自動車が使えなくなった。
問(2) ②「とにかく五千円払えば立ち去ってもよい」とあるが、警察官がそう言った理由として考えられるのは次のどれか。
1.おおぜいの人が見ていたから。
2.自転車は当時五千円くらいだったから。
3.筆者の友人には責任がないから。
4.青年の立場に同情したから。
問(3) ③問い返すととあるが、友人はなぜ問い返したのか。
1.自分に罪はない
2.まわりの人々に罪があると思ったから。
3.青年に罪はない
4.警察官に罪がある
問(4) ④「悪くすると」とあるが、たとえばどうしいうことか。
1.青年がその事故で病気になったりすると
2.警察官がその青年にお金をあげたりすると
3.私がそれをほかの入に話したりすると
4.友人がそれを法的に問題にしたりすると
問(5) ⑤「大いに感動した」のはなぜか。
1.青年にはケガがなかったから。
2.法と正義の理念が実現されたから。
3.警察官のやり方が人道的だったから。
4.友人がそれ以上論争しなかったから。
問(6) ⑥「日本的心情」について筆者が言いたいことは次のどれか。
1.人道的な面もあるが、自動車事故があると損をする人もいる。
2.人道的な面もあるが、法の理念とは 対立するところがある。
3.人道的な面があるので、日本の警察官はもっと誇りを持つべきだ。
4.人道的な面があるので、西洋の法律にも取り入れるべきだ。
問(7) ⑦「不合理な部分」とは、この場合どんなことを言うのか。
1.理屈だけで判断しないこと
2.罰金が安すぎること
3.西洋的な法の考え方に慣れていること
4.日本が住みやすいこと
問(8) 文中の「友人」について、この文章からわかることは次のどれか。
1.日本語がほとんどわからない。
2.法の理念を勉強しに日本へ来た。
3.日本人の考え方がかなりわかる。
4.事故のあと日本がきらいになった。
問題Ⅲ 次の(1)~(7)の文章を読んで、それぞれの問いに対する答えとして最も適当なものを1・2・3・4から一つ選びなさい。
(1)人間社会では、第二次世界大戦の頃から、科学技術がめざましく進み、生産活動は巨大 化し、世界人口は急速に増加した。このことは、人類の繁栄として喜ぶべきことであろうが、反面、各種の公害が大きく浮かびあがり、また、地球は人間社会にとって狭くなってきた。人間活動の巨大化は自然界を変え、それが人間社会にフィード·バックしてくるおそれも出てきた。
そのため、いままでの人類の生き方と、これからの生き方では、大きく方針を変える必要が出てきているように思われる。
(高橋浩一郎.岡本和人編著「21世紀の地球環境」日本放送出版協会による)
問(1) この文章の内容から考えると、どのように「大きく方針を変える」のが適当か。
1.人間活動の巨大化を制限する。
2.生産活動をより活発にする。
3.自然界を今まで以上に変える。
4.人間の住む場所を拡大する。
(2)日本人の睡眠時間が少なくなっていることが、NHKの調査によってわかった。平日の睡眠時間が7時間以下の人は、'70年には〔 a 〕だったが'90年には〔 b 〕に増えている。 一方、8時間以上の睡眠をとる人は〔c〕から〔d)に減っている。
「すいみん」時間量分布の変化(平日)
(NHK世論調査部編『図説日本人の生活時間1990』日本放送出版協会による)
問(1) 問いa~dに入や数字の組み合わせとして、適当なものはどれか。
1.a 18% b 25% c 35% d 32%
2.a 25% b 34% c 40% d 32%
3.a 25% b 37% c 15% d 12%
4.a 25% b 37% c 40% d 32%
(3)人はいつ死ぬかという研究をしている外国の社会学者が調査をした結果、誕生日の1カ月くらい前からの死亡率が急に下がるが、誕生日がすぎてしばらくすると、また上昇するようだということに気づいた。どうして、誕生日が人の死に関係するのか、この社会学者は、お祝いをしてもらえる日を心まちにしているのが延命効果をもつのではないかといっ 解釈を下した。医学者はなんどいうか知らないが、人間にはそういう科学ではわり切れないところがあるに違いないと、その話をきいて勝手に想像したことがある。
(外山滋比古『同窓会の名簿』PHP研究所による)
問(1) 筆者はこの社会学者の意見についてどう思っているか。
1.科学的ではないが、受け入れられる。
2.科学的だが、受け入れられない。
3.科学的ではないので、受け入れられない。
4.科学的なので、受け入れられる。
(4)日本は世界でも有数の地震国である。地震と地震予知にたいする世の関心もたかい。しかし地震予知は一つ間違えば大へんな社会的混乱をまねくことになり、諸刃の剣ともいう べきものである。しかも日本中で直前の地震予知ができるのは今のところ東海地方だけである。純粋に学問的な意味でも、予知できる場所はかぎられている。まして社会に警告を 与える形での予知はそう簡単にできるものではない。行政的な対応がとれぬままに、中途半端な予知情報がもれたときの大混乱は想像にあまりある。
(浅田敏『関東·東海地震と予知』岩波書店による)
問(1) 地震予知について筆者がいちばん言いたいことは何か。
1.関心がいちばん高いのは日本である。
2.どんなやり方であってもしないほうがよい。
3.正確にできるのは東海地方だけである。
4.うまくやらないと社会的な混乱をまねく。
(5)一個の製品は、常に、二つの機能を持っているといえます。一つはその製品が、そもそもの目的で使用されるために備えている本来的で実用的な機能です。例えば、コップ、机、時計、照明、家屋、自動車、橋……といったその対象物の名称が示している機能です。その機能は顧客が自由に選べませんので、非選択的機能とも呼ばれています。もう一つは、より使いやすい、より美しい、より楽しい、より高級な、より好ましいなどといった感情に訴えかける付加価値的な機能です。これを情報的機能といいます。この 機能は顧客が自由に選ぶことができますので、選択的機能とも呼ばれています。
(平井敏夫『色をはかる』日本規格協会による)
問(1) この文章の内容から言えることは次のどれか。
1.コップに水やジュースを入れて飲むのは、コップの選択的機能である。
2.コップに水やジュースを入れて飲むのは、コップの情報的機能である。
3.コップに花の絵が描いてあるのは、コップの非選択的な機能である。
4.コップに花の絵が描いてあるのは、コップの付加価値的な機能である。
(6)つい先日のことだが、アメリカのあるスポーツ指導者が日本の競技者についていってい た言葉を新聞で見て興味をひかれた。日本人はスポーツの上に自分の人生を築いている。出発点に人間がいない。それではダメだというのである。
これは、ほとんどそのままわれわれの音楽にもあてはまる。何故音楽をやるのかということを問う前に音楽から出発する。だから、学生のうちは、あるいはコンクールまでは良いが、その先にはつながらない。これだけの音楽の水準を確保しながら、本当の大家が生まれない。
(遠山一行「音楽の出発点に『人間』はいるか」1991年3月19日付毎日新聞夕刊による)
問(1) この文章で、筆者は何を言いたいのか。
1.音楽をする人も、スポーツをする必要がある。
2.なぜ音楽をやるのかをはじめに考えるべきだ。
3.音楽をスポーツのように考えてはいけない。
4.まず演:奏の技術を高めなければならない。
(7)ギリシャ時代、人間は精神と肉体の調和した発達を理想とした。機械文明の進んだ現代に於いては、人間の精神と肉体とはきりはなされてしまった。というよりも、人間自身が 自己を喪失させまいとする努力から、心は肉体とは別に自由に飛翔できるように彼自らが願い、それが可能になった。精神の異常な状態が現代にあっては、かえって正常であり、健康であるわけである。
(三田富子「眼と心によるスケッチ」、臼井吉見・河盛好蔵編『大学生第二集』潮文社による)
問(1) 「精神の異常な状態」とはこの場合どんな状態か。
1.精神が肉体と調和した状態
2.人間が自己を喪失した状態
3.精神が肉体から切り離された状態
4.精神が自由を失った状態
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